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 初夏を思わせる今日この頃、散歩道では道行く人同士、挨拶を交わしたり、会話を楽しんだり…。外国の観光客が興味深そうに古都の街並みをカメラに収めています。昨年見られなかった光景に心が和みます。ある日の夕暮れ前、のんびりと鴨川沿いの遊歩道を歩いていると、鴨の親子が川べり目指してお行儀よく歩いていました。先頭を行く母鴨は、まるで「こども園」の先生のようです。周りを気にしながら小走りに鴨川に向かって歩みを進めます。七匹の子鴨がちょこちょこと後を追うのです。なんともかわいらしく律儀な行列に道行く人々は足を止めてそっと見守ります。大きな音をたてないように、胸に手を重ね祈るようなそぶりの人もいたり…。

 大きな水鳥やトビのような獰猛な生き者から我が子を守る母の姿に胸がいっぱいになりました。母鴨は、ようやく土手を下って川べりに到着し、後から来るひな鳥を1羽、2羽と見つめながら入水していきます。その時!!出遅れた2羽の子鴨が土手の上から不安そうに「ピーピー」鳴き声を上げています。土手の下にいる母鴨には子鴨の姿は見えません。「どうしよう」私もおもわず小さな声を出しました。人々が固唾を飲んで見守っていると、その声に気づいた母鴨は、川から上がり土手の上に向かって低い声を上げながら進みだしました。7羽の子鴨は、川辺付近で母鴨を見つめながらじっと待っています。

 子鴨も勇気を振り絞るかのように母鴨の声のする方に歩みだしました。土手の中腹で子鴨を見つけると少し高い声を出しお互い近寄り、川辺に戻っていきました。無事、9羽の子鴨と母鴨は対岸に向かってゆっくりと泳いでいくのです。

 涙がでました。なんと深い愛情と母性。勇敢な行動。母鴨が見せてくれた心温まるドラマに敬意と、そして親として生きる道標のようなものを感じました。

 「生きる」うえで守るべきものを守り抜く決意を貫くことは、決して容易ではないけれど、命を尊び、自分を信じ歩み続けるしかないのですね。

育児真っただ中の皆さんに幸あれ…。

 

2023年5月25日

東野こども園 副園長 朝倉豊野

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